報告その7 好事例報告会を開催しました

好事例を多くの人に知ってもらいたい!

2022年11月のスーパーマーケット環境調査では、プラスチック削減の取組だけでなく、省エネや健康に配慮した商品の品揃えや訴求など、多くの好事例が見つかりました。これらの好事例を他のスーパーさんや一般市民、自治体関係者と共有することも今回の調査の目的のひとつですし、スーパー各社・各店の良いところ探しも、「調査のだいご味」の一つです。
一連のWEB報告もその一環ではありますが、より多くの人に知ってもらうため、2023年3月1日午後、京都市内で「スーパーマーケット調査で、市民が見つけた好事例報告会」を開催しました。

広報活動、がんばりました

開催に向けて、京都大学の学生を主体とした環境グループ・エコ~るど京大、京都市内に事務局を置くNPO法人環境市民とNPO法人地域環境デザイン研究所エコトーンに共催団体に入ってもらい、京都市、大阪ごみ減量推進会議、NPO法人気候ネットワーク、京都府地球温暖化防止活動推進センター、NPO法人エコネット近畿の後援を得て、広報等で協力してもらいました。
京都市内のほぼすべての小学校区に設立されている地域ごみ減量推進会議や、京都市内の公共施設に添付のチラシを送付し、調査に参加してくださった個人および団体へも案内を送付しました。

 

会場はほぼ満席 熱気を感じました

会場は、京都市街地のど真ん中、四条通室町東南角にある京都経済センターの一室を借りました。スーパー本社担当者さんや自治体の環境担当者が来てもらいたいと思い、開催時間を平日の日中に設定しました。最大84人収容の部屋でしたが、セミナーを企画した1月当時は、コロナ第8波の先行きが不透明でしたので、六掛けの50人定員で募集しました。
平日の午後でもあり、派手なテーマではないので、「50人の定員が埋まるか」と思いましたが、開催1ヵ月前には申込者が当初設定した定員を越えました。コロナ禍もおさまり、世の中が脱コロナに向かいはじめたため、収容人数いっぱいまで募集を続けることにしましたが、開催一週間前には募集を締めきることになりました。当日数人の欠席はありましたが、会場はほぼ満席。熱気を感じました。
遠方の方から「WEB配信の予定はあるか」といった問い合わせを多くいただきました。
スーパー本社からは5社7名、自治体職員は京都市の他、京都府内複数の市から参加がありました。

当日の内容

内容は以下の通りで、ほぼ予定時間通りに進行できました。
14:00 本日の開催主旨・ゲストの紹介、ごみ減の紹介
14:10 今回の調査の概要(どんな調査だったか) 青果物売場の包装
ごみ減・堀から 商品点数と商品棚面積比でみた場合 チェーンによる違い
14:30 調査参加者の感想
立命館大学学生武田七海さん、新婦人の会右京支部上村賀代子さん
14:40 調査で見つけた好事例 つづき 青果物売場以外
15:05 京・資源めぐるプランの紹介と製品プラスチック回収開始
京都市循環型社会推進部 資源循環推進課 大沼康宏課長補佐
15:20 海外のスーパーはどんなの?
京都大学浅利美鈴研究室・特定研究員 安藤悠太さん
15:30 今回のような市民参加活動の意義
京都市廃棄物減量等推進審議会会長 酒井伸一さん
15:40 意見交換
16:00 終了

調査の概要や好事例の報告

上記のうち、調査の概要や好事例の報告は、ごみ減事務局の堀からさせてもらいました。当日の録画はできませんでしたが、堀報告分については、同内容を下記サイトの動画(パワポ画像と音声、約22分)にまとめています。または、本報告の「その1」から「その6」でも報告していますので、ご参照ください。

調査参加者の感想

スーパー調査に参加された大学生の武田七海さんと、地域で消費者活動をされてこられた上村賀代子さんから、調査に参加した感想を報告してもらいました。
おふたりから、とてもありがたい感想の報告をいただきました。

武田さんから「普段スーパーを利用する際に、野菜などの青果物の包装やお菓子・乳製品・加工品などのプラ製について、あまり意識をしていなかったので、新しい視点からスーパーを見ることができて、興味深かったです。」や、「この活動に参加し、私自身、視野を広げることができ、また、このような機会にお話をすることができて、本当に嬉しく思います。」と言ってもらいました。

上村さんは、ご体調を気にされながらも、「調査があまりにも楽しく、面白く、わくわく感が止まらなかったので、途中ギブアップせずに済みました」とおっしゃっていただきました。さらに「たくさんのお店が協力してくれました。これは、堀さんの相手を攻めない、良い所を捜し出す柔軟なものの考え方、その考え方がにじみ出ている物腰、話し方にあった点が大きいと思います。少なくとも、私は、コミュニケーションの取り方の参考にさせていただこうと思いました。」とおっしゃっていただきました。

おふたりの感想の全文はこちら。
武田七海さんの感想→ Takeda Nanami_san2023.3.1
上村賀代子さんの感想→Kamimura Kayoko_san2023.3.1

京都市からの報告

京都市資源循環推進課 大沼課長補佐から、2021年3月に策定された「京・資源めぐるプラン」に基づくプラスチック削減成果と、4月から始まる製品プラスチックの回収について報告してもらいました。

以下は報告の一部
1 レジ袋の有料化実施の徹底
レジ袋排出量:ピーク時(2000年)の5,200トン→1,200トン(2021年)に減少!
さらに、9年後の2032年には、市民1人あたり35枚/年(=400トン) に削減することを目指す。
2 マイボトル推奨店・給水スポットの拡大
ペットボトル排出量:ピーク時(2000年)の3,600トン→3,000トン(2021年)に減少!
さらに、9年後の2032年には、市民1人あたり45本/年(=1,600トン)に削減することを目指す。
そのために取り組んできたこととして、「マイボトル推奨店」として205店舗(2022年3月末)に参加してもらい、また、「給水スポット」を824箇所(令和4年3月末)、市内に設置した。
3 プラスチック製品の分別回収(2023年4月開始)
2021年度の社会実験結果からプラスチック製容器包装との一括収集の方法で、プラスチック製品の分別回収を開始する。
4 徹底した使い捨てプラスチックの発生抑制に関する周知啓発
地域での学習会「しまつのこころ楽考(がっこう)」や様々な媒体で啓発し、市民周知をはかる。

海外のスーパーはどんなの?

京都大学浅利美鈴研究室・特定研究員の安藤悠太さんから、海外のスーパー店頭の状況について、昨年(2022年)10月に行なった現地調査の報告をしていただきました。訪問国はヨーロッパのフランスとブルガリアです。フランスは2022年1月、青果物のプラ包装の禁止という思い切った施策を実施しました(31種、未加工で1.5kg未満が対象)。実際の状況や青果物以外のプラ削減の取組などを現地で見たことや、フランスやEU(ヨーロッパ連合)の政策的な取組について報告してもらいました。

写真は一般的なフランスのスーパーマーケット店頭の光景
撮影 京都大学安藤悠太氏 2022年10月
 

 

青果物のプラ包装の少なさだけでなく、はかり売りが青果物売り場も含めて根付いていることや、背景に政策的に一定面積以上の店舗へのはかり売り導入の義務化があること、また、特定の日用品など、プラスチック使用している場合に表示義務があることや、再生プラスチックの使用比率の表示が行われていることなどが報告されました。

今回のような市民参加活動の意義

京都市廃棄物減量等推進審議会会長の酒井伸一さんから、今回のスーパーマーケット調査のような市民参加活動の意義についてお話しいただきました。
海洋プラスチック問題は「海の生き物を守れ」といった思いが多くの人の関心を集めた。国連のSDGs目標14にも、2025年までに海洋汚染を大幅に減らすことが目標として設定され、その実現に向けて国際的なプラスチック規制に関係する条約の交渉が始まっている。
ここでおさえておく必要があるのは、日本の場合、70~80%のごみが焼却処理されていて、ごみ焼却から出る温室効果ガスの半分はプラスチック由来であること。国は2050年のカーボンニュートラル社会の実現を目指しているが、プラスチックごみの削減はその実現にも欠かせない。
また、将来的に化石資源の使用が抑制方向にあることも押さえておく必要がある。現在のプラスチック素材の95%は石油由来であり、バイオ資源など代替材への転換もまだ時間がかかる。こういったことから考えても、「海の生き物を護る」ことに加えて、これからの社会をどうするかといった問題に深く関わってくる。
今回の調査では、スーパーマーケット店頭、特に青果物のプラスチック包装に注目された。現代は情報化社会であり、ネットで調べれば多くの情報が得られるが、市民が足を運び、自分たちで調べた貴重な一次情報としてたいへん意義がある。また、20チェーン62店舗から得た好事例を市民や事業者と共有することで、協働と競争が生まれることにも期待したい。今日の会場でも好事例投票用紙が配られているが、市民・消費者の方々がどのような取組に注目し評価するか、こういったことにも興味が湧く。
好事例の中に「おいしい水の供給機の設置」があった。京都市はマイボトル推奨店制度など、全国に先駆けて行ってきた。ただ、今後それをどのように広めていくか、京都市の取組に注目したい。調査の今後については、スーパーマーケットだけでなく、コンビニエンスストアやドラッグストアをはじめ、他の業態への働きかけに広がることも期待したい。
対象として、昨年4月に施行された、いわゆるプラ新法では、プラスチック製のカトラリーなど12品目が特定プラスチック使用製品として指定された。抑制対象とするプラスチック製品である。今回のような調査で削減可能性が明らかにできれば、指定品目への追加を求めることもできるのではないか。そういったことも視野に入れて活動されるとよいと思う。
それと、プラ新法には企業による自主回収ルートという制度も用意された。ペットボトルの店頭回収が広がっているが、歯ブラシやおもちゃなど、使わざるを得ないプラスチック製品もある。それはメーカーに自主回収してもらい、回収した後をどうするかまで考えてもらう、ということに発展することも考えられる。
こういった市民発想での調査活動が継続できて、より発展するよう、行政もいい支援をしてもらいたいと思う。

会場参加者が推した「好事例」

好事例発表会の会場で、右の「投票用紙」を参加者に配りました。報告した「好事例」のうち、「いいな」「利用したいな」と思った取組に、最大3つまで投票をしてもらいました。以下は、当日の投票結果です(投票数62票)。

1位 No.1 ペットボトル1本0.3円で引き取り,寄付先を選べる回収機設置 22票
2位 No.2 店頭にリサイクルステーションを設置(投入量に応じてポイント提供)17票
(以下2組同票)
2位 No.3 対面式販売で、肉の包装に紙または竹皮包装を使用
2位 No.13 サッカー台に、新聞紙で作った袋を、お客さん用に設置
会場での発表はここまで
5位 No.20 再生可能電力の100%使用で、CO2排出実質ゼロ 12票
6位 No.5 鮭切り身のはだか売り、フィルムのみの包装(ノートレー)9票
(以下2組同票)
6位 No.7 半分紙製のお惣菜持ち帰り袋
6位 No.14 ロール状ポリ袋設置なし(土物、水物用の袋は持参してもらう)
9位 No.4 再生トレイの使用とCO2削減効果を店内売場に掲示 8票
(以下2組同票)
9位 No.6 お客さんの持ち込み皿に、刺身の盛り付けをしてくれる
(一部の店は、持ち込み魚の調理もOK)
9位 No.12 ロール状ポリ袋の適正利用呼びかけ

報告は以上です。