CASA「地球環境市民講座」を取材しました。

取材の感想

「地球環境市民講座」は今年(2021年)で28回を数えます。主催されている地球環境市民会議(CASA)は,地球温暖化・気候変動問題に対して,早くから活動されている老舗団体です。講座の講師陣も全国的に著名な研究者や実践者が名前を連ねています。長く続けてこられた秘訣をお尋ねしたところ,「使命感」という大切な言葉をいただきました。

取材日時 2021年9月22日(火)14時から
取材先  認定特定非営利活動法人 地球環境市民会議(CASA,大阪市中央区),ZOOMでの取材
ご対応  早川光俊さん(専務理事),宮崎学さん(事務局,理事)
聞き手  堀 孝弘(京都市ごみ減量市民会議)

団体の概要と活動

地球環境市民会議(CASA  https://www.casa1988.or.jp/index.htm)は,1988年10月,全大阪消費者団体連絡会(大阪消団連)のもとに,大阪西淀川訴訟など大気汚染問題の解決に取り組む活動,オゾン層破壊を防ぐためフロン規制を求める消費者運動,環境保全と公害根絶のために地道な調査,研究を続けてきた研究者・専門家など,3つの市民活動が合流し設立されました。現在では全国に約40団体と260人の個人が参加しています。

設立から今まで,気候変動問題をはじめ環境問題の最新の情報収集と市民に向けた発信に努めています。今回の取材対象とさせていただいた地球環境市民講座もその一つで、この他にも多くのセミナー・学習会や、気候変動問題に関する情報、国際的な条約等交渉状況の発信などに取り組まれています。

地球環境市民講座には熱心なファンが多い

2021年度で28回を数える「地球環境市民講座(https://www.casa1988.or.jp/2/51.html)」についてお尋ねしました。この講座の開催のきっかけとなったのは,1992年のブラジル・リオデジャネイロで開催された「地球サミット」で,翌1993年6月に「病める地球を救うために」と題し,「情報に精通し,自立し,行動する市民」の育成を目的に開催されてきました。毎年テーマを決め,6回程度の講座と1,2回の課外講座で構成されています。内容はその時代ごとのトピックを盛り込み,ダイオキシン問題や生物多様性なども取り上げてきましたが,一貫して気候変動問題を軸に据え,市民に質の高い最新の情報を届けることを大切にされています(2021年度は終了しました)。

当初の名称は「地球環境大学」だったため,「敷居が高い」と感じる人もあったようで,現在の講座名に改称されました。講師陣は全国的にも有名な研究者や活動実践者が多く,しかも講師資料もウェブサイトで公開されています。それだけに参加講師の熱い協力姿勢を感じるとともに,これまでの活動で生まれた人脈を大切にされていることも感じます。団体の活動期間が長いため,講師の中には大学院生時代からCASAの活動に関わり,今や国内第一線の研究者になった人もいます。

この講座には,熱心なファン層が40〜50人ほどいらっしゃるとともに,企画スタッフにもこだわりと使命感があり,それが長く続いている原動力になっているとのことです。

2020年以降は新型コロナ感染症の拡大で,従来どおりの学習会の開催や講師招聘が難しくなった反面,オンライン開催の普及で距離に関係なく,全国の講師を招くことができるようになりました。このことで,より質の高い講座の企画運営が可能になっています。

地球環境市民講座の効果・成果

講座の質の高さ,回数が28回に及ぶこと,また現在は行政その他からの助成金等ではなく,自主資金で運営されていることなど,大きな成果が生まれています。前述のように熱心なファン層をはじめ,毎年多くの受講者があることが支える力になっていると思います。ただ,コアファン層も含めて受講者間のネットワークが形成され,そこから新たな活動が生まれているわけではありません。こういった点は自然環境保全など,現場がある活動との違いで,行動の現場づくりと「動く人」の育成は,今後の課題であるとのことでした。

今後に向けての思い

政府が「2050年カーボンニュートラル」を打ち出したことで,今年の講座テーマの「2050年排出実質ゼロの実現へ」への関心が集まり,講座以外でも省エネ学習会の開催など,地域住民団体や企業の社員研修として提案しやすい状況が生まれています。省エネ学習会では,自身から発信していく人の育成につなげ,前述の現場づくりでは,河川ごみの清掃などを行い,これらによって「動く人」の創出につなげたいとのことでした。

先にあげた使命感では,「カーボンフリー2050のためには,2030年までが勝負」との思いを述べられ,気候変動問題への危機感が熱心な活動を突き動かしていると感じました。

以上