SILK「イノベーション・キュレーター塾」を取材しました。

取材の印象

参加者自身の関心、社会課題、ビジネス性(収益)、この3つを、いずれも高い次元で実現できる人材育成を目指した講座です。その先にあるのは自己実現。受講費はそれなりの金額ですが、取材時までの5期、応募は毎回定員に達しています。参加者の関心は環境問題に限らず、多様な経験とスキルを持った人たちが集っています。

日 時:2019年10月29日(火)13:00~15:00
訪問先:京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK) 会議室
訪問者:松田直子,堀家沙里(認定NPO法人環境市民)

設立までの経緯

・「京都市ソーシャル・イノべーション・クラスター構想」の推進拠点として,公益財団法人京都高度技術研究所(ASTEM)内に2015年4月に設置された。
・京都市ソーシャルイノベーション研究所(以下,SILK)は,市民,企業,NPO,大学等の多種多様な組織や個人が,京都で社会的課題の解決に挑戦することで,過度の効率性や競争原理とは異なる価値観を日本はもとより,世界にも広めることを目的としている。

概要

・SILKでは,啓発,セミナー,場づくり,働き方改革,多様な人材育成を行っている。
・持続可能な社会づくりを可能とする“四方よし”ビジネス=三方よし(売り手よし,買い手よし,世間よし)+未来よしを目指し,従来のビジネスや組織をイノベーティブに導く専門家「イノベーション・キュレーター」を養成する塾で、挑戦者の伴走支援(サポート)を行える人材育成プログラム。
・高津玉枝塾長はフェアトレードの実践・普及と会社経営をしており,社会課題を解決するだけでなく、そもそも課題を生まない社会をどのように作っていくのか、個人のチャレンジにとどまらず、企業とともに伴走していく人材を増やす目的ではじめた。
・前期プログラムが9月から1月まで全6回で,ゲストスピーカーと塾長のセッションの授業と並行して実践ワークとグループワークに取り組む。後期プログラムが3月から6月で,課題設定と実践ワークを行う。目前の課題に対する単なる答えではなく,答えを導き出せる「型」を体得することが目的。

対象

・「イノベーション・キュレーター」とは,単に目の前の課題に対する答えを探す力だけでなく,自分の生き方に軸を持ち,独自の視点で問いを立て,社会にインパクトを与えていく人材としている。
・募集対象として,企業・NPO等で支援業務に携わっている方。金融業界・ファンド等で融資・コンサル業務に携わっている方,行政職員,士業の方等,支援業務を行っている方。事業者または組織内において,新規事業や社内ベンチャー等の立ち上げに関わっている方や経営戦略を立案・実践している方,または今後実践する方としている。
・キーワードとして,俯瞰,本質,デザイン思考,アート思考,価値の創出,意味づけを変える,バックキャスト,つながり,エコシステム,SDGs,多様性をあげている。

応募者数

・費用は18万円(税別)と高額だが、5期まで毎回定員の15名以上の応募がある。
・5期までの塾生の男女比は期にもよるが,およそ6:4くらいである。京都市外在住者で,関西圏の方からの申し込みも多い。
・400字程度で志望動機と「自分が実現したい未来と,解決したい課題について」A4用紙一枚程度の提出が必要で,書類選考がある。

集客

・京都市とSILKウェブ,FB等加え,,卒塾生や関係者の口コミが大きい。会社や銀行単位で,毎年応募するところも出てきた。中小企業診断士,個人事業の方も多い。

影響

・終了後に塾生同士のFacebookコミュニティを形成し,その後もつながりが続いている。そのサポートは事務局も行っている。自主合宿を実施しているグループ等もある。
・この塾をきっかけに新たに起業したり,その時の仕事を辞めた方も多く,入塾したことにより,人生が変わったという方も多い。

効果

・・卒塾生のうち,本業と並行して,非常勤でSILKの職員になった方が3名あり,取材に対応した阪本氏もその一人。
・その後,キュレーターとして活躍できる場づくりは課題の一つである。2018年度には「京の企業働き方改革チャレンジプログラム(公募で選出した7社,約半年実践)」に卒塾生のキュレーターが1社につき複数名参加し,チームとして働き方改革の取り組みをサポートした。

運営

・高津塾長他、事務局にSILKの職員が複数名関わっている。

経費

・SILKの財源は京都市と,塾の受講料18万円×参加者である。

その他

・環境分野のコンサルティング,環境のスペシャリストの人材育成はいま企業から求められ,ニーズがあると思うので,ある程度の費用をとっても集客できると思う。京都信用金庫から人事交流で研修に来られていた方(椿氏)からも,銀行としても同様の意見であるとのこと。
・総務課担当者向けに,実務的な情報提供(容器にプラスチックを使ってない地元野菜を使ったお弁当屋,エコ文房具の購入、店舗のエコ化等)があれば参加したいと思う。ペーパーレス化もニーズが高いと思う。

以上